2024.05.16更新
木造でコストをかけずに大空間をつくる工夫5
大空間を力強く演出する方法
シリーズの5では、コストをかけずというよりは、大空間を構造で演出するAD HOUSEオリジナルな方法を過去例から考えます。 大空間の天井には、シンプルで水平なデザインがよく見られます。間接照明を用いることで、モダンな雰囲気を出すこともできますよね。 こういったシンプルな天井デザインもいいなと思います。 一方で、小屋裏をとらずに勾配天井にして屋根を構成する骨組みをあらわにする方法もあります。 困ったことに、どちらも大好物なんです(笑)。
今回は、この骨組みをあらわにするデザインをメインに考えてみましょう。
小屋裏なしの骨組みをあらわにするデザイン
古民家の空間が人気なのは、天井のない和小屋と呼ばれる木の骨組みがあらわにされていることが多いからです。一般的には太い丸太梁を露出させ、その上に束(柱状)を立てて屋根の荷重を梁に伝えています。このような太い梁が必要だったのは、伝統的な和小屋組みが大きな木材を調達でき、プレカットでなく手刻み時代であったので普通のやり方であったのです。しかし、現代では構造が簡素化され、部材の接合部も金物化され効率からプレカット工場にて木材加工を機会で行うことがほとんどです。そのため、古民家のような風情を感じる空間は少なくなってしまいました。
写真は、農業倉庫をスタジオに改装した例。
住居でない空間なので断熱が必須ではない。だから天井なしで屋根の野地板をあらわにすることが可能。これはこれでよい雰囲気の和小屋組である。
柱を撤去した分、スパンが大きくなるために、既存の小屋丸太梁に法杖を入れて、両脇には補強柱をたてた三角トラスのような構造で補強している。
天井がなく、露出になるため電灯配線は碍子にしている。
和小屋の構造
和小屋とは、柱のスパンが長い場合に梁に上部荷重がかかるため、荷重を受ける梁を太くする必要がある構造です。一般的には、最大で3間(約5.5メートル)程度のスパンまでが梁の調達サイズから経済的であると考えます。
写真は、丸太梁を多用した小屋組み。
現代の住居における断熱と骨組みのあらわし方
現代の住居は、昔と違って温熱気密性能を考慮する必要があります。そのため、断熱を入れるため、小屋組みをあらわにすることは難しい。
ADHOUSEでは天井断熱材を245ミリ確保することで快適な性能を保持しています。そのため、天井を張る必要がありますが、ダイナミックで骨太な骨格を感じる構造をあらわにする方法を模索しています。
奈良の寺院からのインスピレーション。トラス。
奈良や京都の寺院の構造は、現代でも斬新であり、1000年以上の歴史を持つものが多いです。これらの寺院は太い材で構築されていますが、力の流れが理にかなっており、一般住居の空間にも応用できると考えています。例えば、奈良の薬師寺の本堂は、大虹梁と呼ばれるトラスのような構造を用いており、ADHOUSEでは、このトラス構造を参考にして現代のインテリアに洗練された大虹梁を取り入れています。
このような構造を取り入れるためには、大工棟梁の技術が必要です。プレカットでは対応できないため、職人の技術が重要になります。
写真や図を参考にしながら、具体的な事例を紹介し、実際の住居にどのように応用できるかを考えてみましょう。これにより、梁に荷重がかからない方法を考え、実践しています。
洗練系の栗材の大虹梁トラス。
洗練系の栗のトラス。
古材の骨太材を使ったトラス。野太お力強さが印象的な空間。
以上が、大空間を力強く演出するトラス構造の魅力とその実践方法についての考察です。ぜひ、参考にしていただき、素敵な空間づくりに役立ててください。