コラム
2014.12.01更新
ADハウス通信2014年 冬号「湿度を保って快適な冬の暮らし」
湿度を保って快適な冬の暮らし
寒さが厳しくなるにつれ、肌や喉の乾燥が気になる季節となりました。室内で結露も見られるなど、冬の暮らしは何かと悩みがつきものです。乾燥や結露は湿度が関係していると知りながらも、実際どうしたらよいのか分からないことが多いようです。
実はあまり正しく知られていない「湿度」を理解すると、乾燥や結露が発生する仕組みが分かるようになり、対策も取りやすくなります。湿度とは何かを知って、適切な湿度を保った快適冬生活を手に入れましょう。
乾燥しているとはどういうこと?
「冬は空気が乾燥している」とよく言われます。単に湿度が低いことだと思いがちですが、実は湿度には「絶対湿度」と「相対湿度」の2つの種類があるのをご存知でしょうか。絶対湿度は空気中に含まれる水分そのものの量をgで表わしたもので(g/㎥)普段はあまり使われません。相対湿度は、その温度の空気が含むことができる最大の水分量に対して、実際に含まれている水分量(飽和水蒸気量)を割合(%)で示します。通常気象予報や湿度計でいう湿度とはこの相対湿度の方で、湿度何%、という数値はよく目にしますね。快適な湿度は50%前後で、40%以下は乾燥、65%以上になると多湿になり、どちらも不快感を伴います。また過小や過剰な湿度はウイルスやカビ、ダニなどの微生物が繁殖しやすいので、相対湿度は常に40%~60%の範囲に保つことが理想です。
この部分は菌などが発生、活動する湿度を示す。湿度が低くてもまた高くても、バクテリア・ウイルス・カビ・ダニなどの発生や活動は活発になる。快適な湿度ゾーンは約40%から60%で、年間を通してこの湿度を保つことが理想的。(ASHRE報告書1985年より)
ところで、乾燥していると言われる冬の空気ですが、一月の外気の平均湿度は太平洋側の地域でも65%位あります。これでは乾燥ではないはずですが、なぜこのように言われるのでしょうか。
空気は温度によって、最大に含むことができる水分量が大きく異なります。暖かい空気はたくさんの水分を抱えることができますが、冷たい空気は少しの水分しか含めません。例えば30℃の空気は1㎥あたり最大30.4gの水分を含むことができ(飽和水蒸気量)、これを相対湿度で100%と言いますが、10℃の空気が最大に含むことができる水分量(飽和水蒸気量)は9.4gで、これも湿度は100%です。
つまり、10℃の空気なら少しの水分量でも相対湿度は高くなるので乾燥していないことになるのですが、絶対的な水分量は不足している状態なので、正しくは絶対湿度が低いと言うべきなのですね。この相対湿度と絶対湿度の違いを知っておくと、湿度の管理に役立ちます。
エアコン暖房が乾燥を招く?
外の相対湿度が65%でも、家の中の相対湿度は35%で間違いなく乾燥しているのですが、エアコンの温風で乾いてしまうのですか?という質問をよくお受けします。確かにエアコン暖房の部屋は乾燥傾向にありますが、それはエアコンの風が悪い訳ではありません。エアコンは外気を暖めて部屋に送りだしますが、この時期の外気は水分量がとても少ない(絶対湿度が低い)ので、このまま暖めただけでは室内の相対湿度は下がります。例えば相対湿度65%の10℃の外気は1㎥あたり6gの水分を含んでいますが、これを20℃まで暖めても水分量は6gのままなので、相対湿度は35%に下がってしまいます。エアコン暖房の場合は、同時に加湿器などで水分を増やさなければ相対湿度が上がりません。灯油やガスによるストーブやファンヒーターなどの燃焼型暖房器具は、燃焼時に水分が発生するので相対湿度は高めになるはずです。そのうえストーブの上にやかんなどを置くと、更に湿度が上がってしまいますので注意が必要です。
結露の元を作らないために
冬の朝によく見られる結露は、拭けば済むという問題ではありません。夜に湿度が上がり過ぎている証拠で、カビやダニが発生しやすい所で生活しているということですから、結露を起こさない環境作りが何よりも重要です。結露とは湿気のある暖かい空気が冷やされて水蒸気を保つことができなくなり、水滴に戻ってしまう現象です。暖房しながら加湿した後、そのままの状態で夜暖房を切ってしまうと、冷えた室内では行き場所を失った水分が残り相対湿度は100%を超える(露点)ようになります。するとガラスや壁など、室内で冷えている場所から結露が始まります。目安としては窓が一部曇る程度ならまだよい方ですが、全面が水滴で覆われていたり、押入れの布団が冷たく重く感じる場合は、室内に余った水分が相当残ってかなり多湿になっていると考えられます。結露の根本的な解決は、家を冷やさず一定の温度に保ち続けることです。極端な話をすると、暖房を付け続けるか全く暖房しないかのどちらかになります。
昔の家に結露がなかったのは、隙間が大きく気密性が低かったため、常に換気が行われて余った水蒸気は自然に排出されていたからです。やかんを置いたストーブを止めた後、部屋が冷えても相対湿度が露点を越えることがなかったのですね。
近年は住宅の気密性能が高くなり、計画的に換気をしないと湿気が排出されません。高気密住宅では24時間換気が義務付けられていますので湿気がこもるような心配はありませんが、温湿度を一定に保つ性能に優れている住宅なので、逆に余計な加湿をしないように気を付けた方がよいでしょう。調理や浴室、観葉植物や人体からも発生する水分は意外に多く、加湿しなくても日常の生活で発生する水蒸気だけで湿度を保てる場合が多いのです。
一方、過渡期にあった中途半端な気密住宅は一番問題です。外気の影響を受けやすい上に計画的な換気がなく、湿気が逃げにくいので、温湿度の管理が非常に難しくなります。このような住宅は結露が起こりやすいので、防止策としては家の中で温度差を作らない、換気を心掛ける(換気扇を回し続ける)、燃焼型の暖房・調理器具の使用を控え目にするなどの工夫が必要です。
良好な温湿度環境を作るためには、建物の断熱気密性能が非常に重要になることは言うまでもありません。
編集後記
冬の時期、たいていの女性はお肌のお手入れに特に気を使って、家の中の湿度計をチェックしている方も多いと思います。編集者Yもその一人、気管支の弱い息子もいますので湿度には気を付けているつもりです。しかしですね。家の中に湿度計は何個かありますが、どうも信用できない(笑)部屋が違うだけでここまで差が出るはずないというくらい値がバラバラです。結露対策を指南する立場ゆえ、自宅の温湿度管理は完璧でなければ説得力ないわ!とりあえず結露はないけれど、お肌の感じから察すると、ホントの湿度は湿度計よりもっと下かも。そううっすらと疑っていたら、「ほとんどの湿度計は一年もすれば狂う 家庭用はアテにできない」という記事を発見!なんてこった、ああやっぱり。正しく湿度を計るには、乾湿球温度計を使う方法が一番確かなのでお教えしましょう。乾湿球温度計とはコレです。
昔、学校の理科室で見た覚えがあるかもしれません。二つ温度計が並んでいて、一つは水に濡らしたガーゼで包まれた湿球というものですね。乾球と湿球の示度の差を見て、それを乾湿度早見表に当てはめると、湿度が分かるというものです。コツとしては、計る前に30秒ほどうちわなどでガラス球部分を扇いでから値を読むと、より精密な湿度が得られるそうです。詳しい原理の説明は省きますが(汗)千円ぐらいで売ってますし、実用的でプロっぽい感じがステキ。ご家庭にひとつ備えておくのがお勧めです。
編集者も早速購入、次の子供の夏休みの研究にも使おうと思っています。毎日測定させて、自分の喉の感じをチェックして、「僕は湿度何%がちょうどいいみたいです」というレポートにしたらどうかしら(笑)今から密かに計画を練る編集者でした。