コラム
2017.04.01更新
エーディーハウス通信2017年夏号『間違いのないエアコン選びで暮らし方上手に』
目次
蒸し暑さが特徴的な日本の夏。間違いのないエアコン選びとは
蒸し暑さが特徴的な日本の夏。特に近年は猛暑続きで身体への負担が大きく、体調管理に気を遣います。
自然な暮らしを心掛ける人にとっては、できるだけエアコンを使わずに過ごしたいところですが、この暑さではエアコンと上手に付き合うことも必要になります。
夏に備えてエアコンの買い替えを検討している方が増える一方で、どんなものを選んだらよいのか分からないという声も多く聞かれます。
今回は間違いのないエアコン選びについて、設備士やライフオーガナイザー(暮らしの最適化アドバイザー)など、様々なプロの視点から教わった点を分かりやすく紹介します。
カタログの見方をマスターしよう
最適なエアコンを選ぶには、エアコンの能力を見極めることが大切です。まずエアコンのカタログ表記の正しい読み取り方を知っておきましょう。
家電店ではどのエアコンにも、だいたいこのようなラベルが付いています。
「冷房時おもに10畳用」の見出しで、畳数のめやすの部分に「冷房時8~12畳」と書かれています。
これを見ると、この機種は8畳から12畳くらいの部屋の冷房に丁度よいのかと思えますが、そうではありません。
大変分かりにくいのですが、これは「木造住宅で8畳」「鉄筋コンクリート住宅で12畳」の部屋の冷房に適していることを表し、8畳~12畳で使えるという意味ではないそうです。
また、家は断熱等級3程度のものであり、部屋は木造住宅の場合南向きの和室、鉄筋コンクリート住宅の場合は中間層の南向き洋室を想定しています。全てのエアコンのカタログやチラシはこのルールで書かれていますので、覚えておくと役に立ちます。
省エネ能力はAPF値で必ず確認
対応畳数の見方が分かったら、次はエアコンの省エネ度を確認しましょう。
エアコンは「省エネ基準達成率」や「エネルギー消費効率」「年間電気料金」など、省エネに関する情報を公開するように義務付けられています。
次のような「統一省エネラベル」が必ずエアコンに付けられていますので、必ず確認して下さい。
統一省エネラベルには多くの情報が書かれていますが、この中で省エネ性能が一番正しく分かる項目があります。それが「通年エネルギー消費効率(APF)」です。
APFとは一年間で必要な冷暖房能力を消費電力で割ったもので、簡単に言うと1の電気が何倍の力になって働いてくれるかを示す数値になります。
この数値が大きければ大きいほど、効率の良い省エネルギー型のエアコンということになります。一般的にはAPFの数値が6以上あれば、十分に効率がよいと言えるようです。
では他の項目にある「省エネ基準達成率」や星の数はどうかと言うと、これはある時点で定めた省エネ基準の目標値から、現在どれくらい達成しているかを%で表しています。
例えば先ほどのエアコンのモデルでいうと、目標年度は2010年となっており、その年の同等品と比べて108%性能が上がったことを示しています。
つまり、同じ機種内での相対評価のようなものなので、数値と星の数が高いことに越したことはありませんが、これで各エアコン同士の省エネ能力を比較するのは難しいと言えます。
省エネ性能は、絶対評価であるAPF値と必ず照らし合わせて見るようにして下さい。なお、APFの数値が2つ違うと、電気代はひと月約1000円変わるという結果が出ています。
自宅の断熱性能に合った選択が大切
木造住宅の8畳の部屋用に、8畳用の値段が手ごろな機種に決めたところ、たいていの家電店では「ワンランク大きいものを」とアドバイスされることが多いようです。
その理由として、あまりにもぴったりのサイズを選んでしまうとエアコンが常にフルパワー運転になり、効きが悪く寿命も短くなると説明されるようです。
確かに、エアコンは定格能力よりも少し余裕があるくらいで運転するのが最も効率がよくなります。ただし、エアコンのカタログで設定している家は、断熱等級3程度の「新省エネ仕様」と呼ばれるもので、平成4年頃から建てられた住宅で最も多く見られる断熱仕様です。
現在でも建売住宅では断熱等級3が標準的ですが、平成14年度以降に建てられた比較的新しい住宅では、断熱等級4以上に上げられたものが普及しています。
断熱等級が高い住宅は外の熱気を断つ性能に優れているため、対応畳数どおりのエアコンでも能力に余裕が出る場合がほとんどです。
この場合は畳数のめやすより一サイズ下でもほぼ問題はないので、APF値の方を重視して下さい。
エアコンは一般的に対応畳数が大きいものほど高価ですが、大型になるにつれAPF値が低くなります。
断熱性能のよい広めのリビングを冷房する場合は、大型を一台置くよりも小型でAPF値の高いものを二台にした方が効果的です。
家電店ではお住まいの断熱性能のことまで尋ねられることはなく、畳数以上の高価な機種を勧められることが多いのですが、ここでは自宅の断熱性能に合わせたAPF値の高いものを選ぶようにしましょう。
他にも、人感センサーや空気清浄、自動フィルター清掃など、メーカー独自の様々な機能がありますが、これらは自分にとって必要なものかを見極めてから選ぶとよいでしょう。
賢く選んで賢く使い、省エネに
エアコンはひと昔前に比べると、機能や省エネ性能が格段に向上しています。住宅の断熱性や気密性も大幅に向上しており、小型のエアコンでも十分に能力が有り余ることが多くなっています。冷房が効き過ぎると、本来使わなくて済む電気を無駄に使うことになるので、適正なサイズのエアコンを選び賢く使うことが大切です。また、運転方法にも工夫が必要です。冷房で大切なことは、空気を冷やすのではなく、壁や床、周辺のものに熱を持たせないことです。厳しい日射でいったん内壁まで暖められてしまうと、いつまでも放熱が続いて冷房が追いつかなくなります。一番の対策は建築時に断熱性の高い住宅にすることですが、まずは「壁を暖めない」ことに注意して冷房を続けましょう。冷房の入り切りは始動時に多くの電気を消費するので、一日を通して安定した室温になるように冷房を続けた方が結果的に省エネになります。なお、エアコンの選び方については、他にもケースごとに詳しく解説した表がありますので、是非参考にしてみて下さい。
編集後記
クールビズの設定温度、28℃は暑すぎるのでは・・・という議論が政府や学識者の間であったようです。巷でも、そうだ暑い!いやそんなもんだ!と意見は真っ二つの様子。
編集者Yの個人的意見を言いますと、そりゃ暑いでしょ。
それにしても、どうして温度ばかり論戦に挙げられるのか不思議で仕方ありません。
体感温度を決めるのは温度、湿度、気流の3つ、特に湿度は大きく体感を左右します。ハワイに行かれたことのある方はお分かりになると思いますが、温度が高くても湿度が低ければカラッと気持ちがいい。
でも日本の夏は高温多湿が当たり前、単に温度を28℃に下げても、湿気が多ければ暑い、の一言でしょうね。だいたい湿度が70%越えたらどんな温度でも不快です。28℃が快適だとは間違いなことくらい、誰か気づかないのかな・・・それからエアコンの設定温度を28℃にしておけば、室温は28℃のはずとの思い込みも大間違い。
パソコンやOA機器、家電からの放熱で、スポット的に高温になっている場所はたくさんあります。空気温度が28℃でも、天井や壁、床の表面温度が高いと、体感的にはそれ以上に暑いと感じますから、とてもクールなビズどころじゃないはずです。28℃という数字よりも、もっと科学的な実証が必要なのでは。
先日所要で某お役所を訪ねたところ、まー、室内に異様な熱気がこもっていたので思わずゲッソリ。仏頂面で待つ編集者に気付いた役人さん、慌ててやってきて「暑い中すみません、役所内は7月にならないと冷房が入らなくて・・・」とご自身も額に汗がびっしょり。え、そうなの?6月でもこんなに暑い日があるのにお気の毒ね。中で仕事している人だけじゃなくて、こうして来客もあるのだから、暑いときくらい冷房すればいいのに。と言うと、「ええ、でも早く冷房すると、税金の無駄使いだと言う方もいますし」とのこと。そう捉える人もいるのか・・・ほんとお気の毒。エアコンよりも、照明やOA機器の方がはるかに多くの電気を使っているんですけどね。
人間は暑いとイライラしがち、つい冷房は電気の大量消費だ!と考えてしまうようです。そして冷房をちょこまか消す、暑くなる、更にイライラの悪循環。正しく冷房して気持ちよく過ごせた方が、仕事の能率も上がって省エネにつながると思いますが・・・みなさんクールになりましょう、クールに。