コラム
2024.04.15更新
繰り返される大地震にも耐えられる、強い家にしよう ADハウス通信2024年春号
元日に能登半島で起こった大地震では多くの建物が被害に遭いました。もはや地震が起こらない地域などない日本では、住まいと家族の命を守るための対策が非常に重要です。今すぐ我が家の耐震性能を確認し、足りないところがあれば補い、万全に備えておきましょう。
目次
我が家は地震に耐えられる? 建築年度をご存じですか
震度7を観測した能登半島地震では、古い木造住宅の崩壊が相次ぎました。被害の大きかった珠洲市の耐震化率は約51%、輪島市では約45%だったそうです。死因が公表されている死者のうち9割が家屋の倒壊によるもので、住宅の耐震化がいかに重要であるかが分かります。ここで言う耐震化とは、現在の耐震基準(新・新耐震基準)を満たしていることを指します。これまで大きな地震がある度に建築基準法は改正されて耐震基準は引き上げられていますが、1981年6月以降に建てられた(正しくは建築確認申請が行われた)建築物については新耐震基準が適用されており、2000年6月以降に建てられた木造建築物は新・新耐震基準適用で更に厳しい基準を満たしたものになります。
ただ耐震基準が厳しくなっているとは言え、建築基準法で決められた耐震性とは最低限人命を守ることができる程度のレベルです。新・新耐震基準では、「震度5強の地震に対して損傷しないこと。震度6強から7強の地震に対して倒壊・崩壊しない強さであること」としています。つまり、倒壊や崩壊で人が犠牲にならなければよいという考えなので、地震後に継続して今まで通りに住めるかについての保証はありません。
新しい家なら大丈夫とは限らない耐震等級を調べよう
我が家は2000年6月以降に建てたから、震度7でも倒壊しないと安心された方がいるかもしれません。本来ならそのはずですが、新・新耐震基準が想定している強さとは「数百年に一度起こる極めて稀な」震度7に対してということになります。しかし地震はその予想通りに起こるとは限りません。例えば同じ震度7でも長時間大きくゆっくり揺れるのか、短時間に衝撃的な強さで揺れるのかでも違いますし、前後の余震の規模や回数でも建物への影響は異なります。また震度7以上の設定はないので、実際はそれ以上の強い揺れであったとしても震度7に分類されます。人間の想定をはるかに超えてくるのが自然災害の怖いところ。実際にはどんな地震が起こるか分からないので、耐震性能は可能な限り高めておくことが必要だと言えます。そこで大切になるのが建物の耐震性能のレベルの度合いです。耐震性能は3段階にランク分けされた耐震等級で知ることができます。一番下が建築基準法同等レベルの耐震等級1で、最上級が等級3です。2000年6月以降の木造建物物は耐震等級分けされていますが、1981年から2000年6月までの建物についてはランク分けがなく、最低でも耐震等級1以上ということのみ保障されています。耐震等級は「住宅性能評価書」という書類で確かめられます。住宅性能評価書は交付義務ではないため、持っていないご家庭もあるかもしれませんが、その場合は建てた時の工務店やメーカーに問合せをすれば分かります。
「極めて稀」はよく起こる?! これからは耐震等級3が必須に
耐震等級1と3の間では実際どのくらいの差があるのか比べてみましょう。
2016年の熊本地震では比較的新しい耐震等級1の住宅のうち10.9%が倒壊しました。10%なら少ないと感じるかもしれませんが、倒壊しないレベルだと保障されたものが倒れたのですから大変重大な事態です。実は耐震等級1が耐えられると想定した地震は、震度7が1回のみの場合です。震度7が2回襲った熊本地震では2回目の揺れに耐えきれず倒壊してしまった例が多いようです。耐震等級3の住宅では軽微な損傷が2軒ありましたが、あとは全く無被害であったことが確認されています。このことから、耐震等級1はもはや不十分で耐震等級3を義務化すべきという声が上がりましたが、現時点では耐震等級は施工主自身が自由に決めてよいことになっています。耐震等級は上がるにつれどうしてもコストが高くなるため、ためらわれる方もいらっしゃいます。しかしその分地震保険や住宅ローンで優遇措置を受けられ、何より繰り返される地震にも耐えられる強い家が手に入るという安心感は何物にも代えられないのではないでしょうか。今回の能登半島地震でも、地震が起きた際の映像を見ると激しい揺れが始まってから15秒程で倒壊している住宅もあり、倒壊する前に逃げることすらできません。これから建てる家は耐震等級3が必須、強度が足りていない古い住まいならできるだけ早く耐震改修し、備えることが望まれます。
耐震等級3の家で長く安心して住まうために
耐震等級3の家とはどのような仕組みになっているのでしょうか。耐震等級を高くするには、次の3つの要素が欠かせません。
①耐力壁が多い
耐力壁とは地震による水平方向からの力に抵抗し、変形を防ぐ働きをする壁のこと。通常の壁とは違い、中に筋交いが入っていたり構造用合板を張るなどして強度を高めている。
②耐力壁の配置バランスがよい
耐力壁が多ければいい訳ではなく、バランスよく配置することが重要。一方に偏ると地震が発生した時にねじれが生じ、倒壊に繋がる。1階と2の耐力壁の位置を合わせることも大切。建物は正方形に近いほど偏心がなく理想的。
③基礎と床の強度が高い
どんなに建物を強固にしても、基礎部分がグラグラなら壊れやすいのは当然。床の強度不足は地震の際に変形を招く。地盤が強いことも必要条件。弱ければ地盤改良を行う。
耐震等級3の強さが確保されているかについては、構造性能を徹底して検証する必要があります。エーディーハウスでは一棟ごとに耐久性と安全性を確認し、耐震等級3レベルの住宅を全棟で実現しています。またその際、最低ラインでレベルをクリアしているということがないようにするのも重要です。将来に設備を増設するなどして建物が重くなる可能性などを見据え、増改築にも対応できる強さを計画当初から標準にしています。古民家などの古い住宅でも、耐震改修で耐震等級を2~3レベルまで引き上げることが可能です。住まいの耐震等級を知り、地震に備えることは家族の命と財産を守るために大切です。何か対策を始めたいとお考えの方や、ご希望の方は是非ご相談下さい。