コラム
2013.08.01更新
ADハウス通信 2013年夏号「木材利用ポイント制度、スタート!」
目次
木材利用ポイント制度、スタート!
平成25年4月1日、林野庁による「木材利用ポイント制度」が始まりました。対象の国産木材を用いた住宅の新築、増築、リフォームなどにポイントを発行し、木製品や地域の農産水産物などと交換できる制度です。期間は一年間に限定されていますが、ポイントの上限は最大60万ポイント(約60万円相当)と、木造住宅の建築を考えている方や木材を使ったリフォームを希望する方には大きな特典が得られる機会です。木材利用ポイント制度を利用するための条件や、手続き方法などを解説いたします。
対象地域材の活用でポイントが付与される。地域材の樹種は主にスギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツなど。指定された部位に指定量以上の地域材を使用することが求められる。
木材利用ポイント制度とは?
日本は豊富な森林資源を持ちながら、木材自給率はわずか3割程度と低く、外国産材が7割を占めています。戦後大量に植林されたスギやヒノキが充分に成長し、使用可能な時期を迎えているにも関わらず、安価な輸入材に押され需要は落ち込む一方です。国産の優良な国産の木材が無駄になるばかりか林業は衰退し、荒れた森林が増え、多くの森林は保水や国土の保全、二酸化炭素の吸収などの本来果たす貴重な機能を失いつつあります。
このような状況を改善するためには、一般消費者にも国産材をもっと使ってもらうことが大切。木を使うことで林業が再生し、地域経済の振興の後押しとなる他に、森林の整備・保全が促進されて自然環境が整い、持続可能な循環社会が形成されることになります。そこで国産材にポイントを付与し、消費者が積極的に木材を活用できるようにと考えられたのがこの「木材利用ポイント」です。
どのくらいポイントがもらえるの?
木材利用ポイントをもらえるのは、次の場合になります。
- 木造住宅の新築(一律30万)
- 住宅の内外装の木質化(上限30万)
- 認定された木材製品の購入
- 木質エネルギーを使う暖房器具の購入(ペレットストーブなど)
1ポイントは1円に相当し、それぞれのケースによってポイント数が決められています。
例えば木造新築住宅では30万円相当のポイントを得ることができ、更に床や内壁を9㎡以上、外壁を10㎡以上木質化すれば、それぞれに応じたポイントも獲得できます。合計して60万ポイントの満額を得るには相当の面積と工夫が必要なので難しいかもしれませんが、6畳間の床(およそ9㎡)の床を木質にリフォームした場合でも3万ポイントが付与されますので、木質化リフォームにはお勧めです。床や内壁、外壁など部位ごとに分けて木質化リフォームすると、それぞれでポイントを効果的に得ることができます。
ポイント対象になるための条件
新築やリフォームで使用する木材は何でもよい訳ではなく、「地域材」と定義されたものに限られます。「地域材」とは各都道府県で産地の認証を受けた木材か、民間の第三者機関で認証されたもの、または林野庁で証明されたものとなります。木造新築住宅では、工法ごとに対象樹種が決められ、主要構造材に50%以上の地域材を使用しなければなりません。内外装に使用する木材についても、地域材を50%含んでいる材料であることが求められます。
また、工事する業者は地域材の利用に意欲的に取り組んでいると認定された登録業者でなければならず、その登録業者が施工した物件だけがポイントの対象となります。そして、期間は平成25年4月から平成26年3月末までに開始された工事のみと決められています。
このように条件は厳しく、個人で行うようなDIYにポイントは適用されません。やや難解で一般消費者には使いにくい点もありますが、逆に言えば認定登録事業者に任せればよいということです。ご相談の上、地域材の選定から条件を満たした設計施工を行い、ご希望のポイントが得られるように計画します。住まい手にとっても、建物の主要部分にどのような木材をどの程度使うのか、理解できるよい機会です。弊社では登録業者の認定を受けておりますので、是非ご相談頂きたいと思います。
ポイントは何と交換できるの?
獲得したポイントは地域の農林水産品や地域の振興券、商品券、自然保護活動への寄付などに交換できる他、ポイント発行対象工事と同時に行う他の工事費用に充当する即時交換も可能です。
ただし、地域経済の振興という観点から、地域の農林水産品への交換が優先されるので、即時交換や商品券、プリペイドカードへの交換は発行ポイントの50%までに制限されています。交換商品についてはあらかじめ決められた商品類からカタログ形式で選ぶことになりますが、肉や魚、米、野菜などの生鮮農産品や木製家具などが挙げられており、普段買えないブランド和牛や珍しい食材などと交換する楽しみが味わえます。通常なかなか手の届きにくかった、品質の良い高級な国産ヒノキ、スギなども利用しやすくなるのではないでしょうか。
交換申請手続きは、施主と施工した登録業者のどちらも行う事ができますが、書類の準備や工事内容の記載が必要なため、施工業者が代理して行う方がスムーズにいくと思われます。
尚、木材利用ポイント制度は予算事業となっており、申請数が予算に達した場合は早期に終了する場合があります。申請は事前予約もできますので、木材利用ポイント制度を利用した工事をご希望の方はお早目にご相談下さい。その他詳細は林野庁ホームページでも見ることができます。
編集後記
木材利用ポイント制度・・・これを作らなければならない程、国産木材の利用が落ち込んでいるとは正直驚きましたね。
今、日本がTPPに参加するという話をよく聞きます。TPPで関税が撤廃されたら日本の農業は大打撃と言われていますが、実は木材に関してはとうの昔、1964年に関税がなくなり既に自由化しているんです。安い輸入材のお陰で住宅は安くなったけど、日本の林業は廃れるばかり、山は荒れ放題。緑豊かに見える山の中味は植えっぱなしで放置された植林スギ。
道理で編集者のスギ花粉症がひどくなっていく訳だ(涙)
スギは根が浅くて保水力に乏しく、洪水や土砂災害などの環境破壊の一因にもなっているそうです。もう一刻も早く切り倒して使っちゃえ、花粉症に苦しむ人の為にも?!と個人的感情はさておいて。安ければ買う、だから安いものを提供するという目先の経済を優先した結果がどうだったのか、怖いほど露呈しているのが今の林業の状況です。安値至上主義の裏にどれほど膨大なものが犠牲となり、失われていることでしょう。今になって慌ててポイント作ったところで、国産材を使うことの大切さ、素晴らしさを伝えることができるでしょうか?
そういえば「木こり」って言葉、ウチの子供たち知ってるかしら。聞いてみると「何それ?知らん」まさか、もう、死語・・・?与作の歌を歌ってみせたら「うわ~昭和の世界~」と一笑されておしまい。文化までもぎ取られているのか、やはりこれはダメでしょう。
これから全ての分野で関税撤廃になり、安価なモノが大量に輸入された後のダメージが予想できて恐ろしい。それでも一消費者として、値段なんかに惑わされないわよ、という気概くらいは持っていたいと感じた編集者でした。