コラム
2021.10.01更新
『ウイルスと細菌に強い家で快適に暮らそう』エーディーハウス通信2021年秋号
新型コロナウイルスが収束しない中、抗菌・除菌作用効果をうたう製品が日ごとに増えてきています。家電や住まいに使われる建材にも多く見られるようになりましたが、抗菌、除菌、更には殺菌など、よく聞く言葉にはどんな違いがあるのか、よく分からないままではないでしょうか。そこで今回はより健康で清潔な暮らしのために役立つ、住まいの抗菌・除菌対策についてお伝えします。
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目次
「菌」と「ウイルス」の違いを知って正しく対応する
家庭内感染を防ぐため、家の中にウイルスが付着したり増殖しないよう、清掃や消毒に一層気を遣うようになったという声が多く聞かれます。「除菌」「抗菌」と書かれた商品を見ると効果を期待してつい買いたくなりますが、この言葉の意味や違いを知った上で、正しく使うことが大切です。まず気を付けたいのは、「菌」と「ウイルス」は違うということ。「菌」は単細胞生物で、体内から身の回りのあらゆるところに存在しています。例えば大腸菌や結核菌など人体に害のあるものから、乳酸菌や納豆菌など役に立つものまで何万種類もあると言われています。それに対して「ウイルス」は菌類よりも小さく、細胞を持たないため、自力では生きられません。ウイルスは他の細胞に入り込んで壊していくことで増殖します。
このように「菌」と「ウイルス」は構造が違うため、感染予防法が異なります。ちなみに「除菌」「殺菌」「滅菌」に使われる「菌」はあらゆる菌とウイルスを含みますが、「抗菌」という言葉だけは「菌」のみを指し、ウイルスはその対象に入りません。つまり「抗菌」は菌の増殖を抑制しますが、ウイルスへの効果はないということです。ウイルスに対して有効なものは「抗ウイルス」と区別して表記するように定められています。これらの言葉の違いは次のようになります。
除菌するモノの違いに合わせてウイルスを取り除く
新型コロナウイルスの除菌にはアルコールが効果的であることは既にご存知かと思います。新型コロナウイルスはエンベローブという脂質の膜で守られているので、これをアルコールで壊してしまえばウイルスを無毒化することができるという訳です。油の膜を壊せるものならば、特に除菌を強調したものでなくても、一般的な食器洗い洗剤や洗濯洗剤、せっけんで十分な効果が得られます。食器洗いや洗濯、お風呂掃除などは普段通りで心配ありません。手指は丁寧に洗い、更にアルコール(濃度70%以上95%以下)をすり込むと安心です。尚、新型コロナウイルスをはじめとしたウイルス・菌は高温に弱く、80℃以上の温度に10分間さらすと死滅させることができます。食器洗い機は高温洗浄が可能なため、活用をお勧めします。さて、手指や食器、洗濯物など直接洗えるものは比較的容易に除菌できますが、家具や壁、床などのモノの除菌は簡単ではありません。アルコールで変質してしまう素材もあり、熱湯をかける訳にもいきません。他の代表的な消毒薬である塩素系漂白剤(ハイター等)を用いた拭き掃除もある程度効果があるとされていますが、独特の消毒臭や、皮膚への刺激を考えると、頻繁な使用は控えたいところです。塩素系もアルコールも使えない素材で、ドアノブやテーブルなど、どうしても気になる場所があるという時は、台所用洗剤などの中性洗剤を水で薄めたものを布に含ませて拭きましょう。洗剤に含まれる界面活性剤が新型コロナウイルスの油膜を壊してくれます。拭き掃除の際は往復せず、必ず一方通行で拭き取ることが大切です。
抗菌・抗ウイルス製品は効果があるの?
除菌というのは菌やウイルスの数を減らすことなので、万全とは言えません。では、最初から菌やウイルスが住みにくい環境にしたらどうかと作られたものが「抗菌」「抗ウイルス」製品です。なお、「抗菌」は菌の増殖を防ぐ働きをしますが、ウイルスの場合はモノの表面で増えることはないため、「抗ウイルス」はウイルスを不活性化させ感染力を失わせることを指します。抗菌・抗ウイルス製品は、抗菌・抗ウイルス作用のある物質を素材に練り込んだり、化学反応で結合させたりして作られます。代表的な例に銀や銅などの金属や、お茶の成分カテキンなどが挙げられます。ただこのような製品は、効果が期待できるという程度で、いつまで持続するかも確証されていません。抗菌・抗ウイルス加工だから何もしなくても安心だというのも間違いです。加工表面が汚れていると効果は発揮されなくなるため、抗菌・抗ウイルス製品であっても常に清潔に保つ必要があります。最新の空気清浄機の中には、特殊な技術でウイルスを不活性化させるというものがありますが、いずれにしてもフィルターが汚れたままだと逆効果になりますので、こまめに手入れをするようにしましょう。また、空気清浄機は二酸化炭素や水蒸気の排出ができないので、換気の代わりにはなりません。素早くウイルスを取り除き、空気の質を向上させるには、除菌や抗ウイルス対策よりもまずは正しい換気が何よりも重要になります。
天然の素材に含まれる抗菌・抗ウイルス成分を最大に生かそう
特別な技術や化学を駆使しなくても、昔から使われている素材の中には天然の抗ウイルス作用を持つものが存在します。例えば木材はウイルス感染症を抑制する効果があることが分かっています。これは木材がもつ調湿作用の力が大きいと考えられており、木材の表面はウイルスが生存しにくい湿度(50%~60%)のため、付着すると感染力が短時間で減少することが実験で確認されています。実際に、様々なウイルスをそれぞれゴム、プラスチック、ヒノキ材に付着させると、ゴムとプラスチックは20分経過しても感染力を維持したままであるのに対し、ヒノキ材は10分経過時で減少するそうです。木造校舎はインフルエンザによる学級閉鎖の割合が少ないという調査報告もあり、ウイルス特性が似ている新型コロナウイルスにも効果があるのではと言われています。また、木材に含まれるフィトンチッドには高い抗菌効果があることが知られています。フィトンチッドの代表格に有名なヒノキチオールがあります。ヒノキチオールを多く含むヒバやヒノキが古来より住宅に使われてきたのは、抗菌成分を豊富に含み、耐久性にも優れているからでしょう。フィトンチッドは「木の香り」の成分のもとでもあり、精神の安定、鎮静にも大きな役目を果たしています。
日本の伝統的建材である漆喰も高い抗ウイルス、抗菌効果を保有しています。漆喰は天然の石灰石を主成分にした左官材で、強いアルカリ性を示します。菌やウイルスは強アルカリの環境下では生息できないことが知られており、世界各国で疫病防止に役立てられています。中世ヨーロッパで大流行したペストの消毒薬として、また現代でも鳥インフルエンザなどの家畜伝染病が発生した際、石灰石を原料とした消石灰が消毒目的で撒かれています。また、アルカリ性が高い場所ではダニのような生物も繁殖しないため、アレルギーを防止することもできます。自然由来の抗菌・抗ウイルス成分は、化学的な薬品に比べると効き目は穏やかなものですが、毒性が低く副作用がないという大きな利点があり、健康的な暮らしに貢献します。エーディーハウスでは新型コロナウイルスの流行以前より、自然素材の恵みを最大に生かした健康住宅を提供しております。どうぞご安心してお任せください
編集後記
高校時代の古文の先生が面白かったおかげか、古文が割と得意だった編集者Y。授業をきっかけに、源氏物語はじめ古典文学をよく読みましたね(もちろん口語訳)話の内容そのものも好きですが、途中さりげなく書かれている衣食住に関する描写で、当時の暮らしぶりを想像するのが楽しいんです。しかしまあ、平安時代の人々の生活はというと、陰陽道やら暦などでガチガチに縛られた、制約だらけの毎日な訳です。当時人々にもっとも恐れられていたのは、天変地異と疫病の流行。これら災いから身を守るため、毎日ひたすら吉凶に従って行動しています。方角の吉凶は重要で、病気の治療にいい方角を選んだり、今日はお出かけ先の方角が縁起悪いと分かると一旦別の場所に移動して、そこから出かけ直す、方違え(かたたがえ)ということをしたそうです。他にもお風呂が禁忌の日、これを食べたらダメな日、中には排泄したらいけない、という日もあったようですよ…また個人的に悪いことが続くと「物忌み」という、自主的隔離で謹慎してやり過ごした等々、とにかく占いに振り回されて大変そうなことばかり。まあ、何も情報がない時代で、病院やお医者さんがいる訳でもない(薬師という薬剤師のような人はいたらしい)中でひとたび疫病が流行りだしたらパニックに陥るのは当然で、日々のおまじないで避けられるならと思う気持ちは理解できますよね。「赤もがさ(はしか)」が大流行して、疫病退散と病気平癒のご祈祷が日夜通して行われている様子もあり、完全に神仏頼みの世界。どんなに怖かったことだろうと推察しますが、こんな時代じゃなくてよかった、とも思ってしまう(笑)いや、今でも未知の病の発生に右往左往している様子は、あまり変わらないかもしれません。でも現代を生きている者の全員が、数々の疫病をなんとか攻略して生き残った末裔なのであって、その強い生命力を間違いなく受け継いでいるわけです。きっとまた乗り越えていけるはず。多分あと少しの間、辛抱していきましょう!