コラム
2015.04.01更新
ADハウス通信 2015年春号「バリアフリー・リフォームで、誰もが安全して住まう家に」
目次
バリアフリー・リフォームで、誰もが安全して住まう家
高齢者社会が進む中、住まいを加齢や身体条件に配慮したバリアフリー仕様にしたいとご希望される方が増えています。
新築のバリアフリー住宅は増えていますが、高齢者にとっては新築に移り住むよりも住み慣れた我が家で暮らし続ける方が安心です。自分らしく自立した生活がいつまでも自宅で送れるように、バリアフリー・リフォームで暮らしやすい環境に整えることが、これからの住まいに必要になるでしょう。
バリアフリー・リフォームにはどのようなものがあるのか、またバリアフリー・リフォームで受けられる様々な補助や助成制度をご紹介します。積極的に活用して、お得で賢いリフォームを実現しましょう。
バリアフリー・リフォームって何?
バリアフリーと言うと以前は単に段差や仕切りがないことを指しましたが、本来の意味は「障害・障壁のない」状態を表します。
高齢者や障害者が生活して行く上で、障壁(バリア)となるものを取り除き(フリー)、車いすや松葉杖でも不自由さを感じることなく生活できるように考えた計画がバリアフリー設計です。また介助する人がより介助しやすくなる工夫もバリアフリー計画に入ります。
どのようなことがバリアフリーになるのか、国土交通省では次のような例を挙げています。
- 廊下や出入り口の幅を広げる
- 階段の勾配を緩やかなものに取り替える
- 浴室の床面積を広げたり、浴槽への出入りが楽にできるようにする、使いやすい水栓に取り替えるなど、浴室全体の改良
- 和式便所を洋式に交換、介助者のためのスペースを設けるなどの便所の改良
- 各所への手すり設置
- 室内の段差解消
- 出入り口扉を引き戸に変更、ドアノブをレバーハンドルに取り替えなど、開閉が簡単なものにする工事
- 廊下や室内の床を滑りにくい材料に取り替える
これらを見ると、当然ですが高齢者や障害者が安全に動けることを重点に置いていることが良く分かります。また、日常の動作を補助する目的も併せ持っている事が分かります。加齢による身体機能の低下は避けようのないことですが、特に体の一部に力を入れなければできないことが次第に困難になり、精神的にも負担に感じるようになると言われます。
例えば、水道の蛇口やドアノブを回すという健常者にとっては何でもないことでも、高齢者には「ひじから先を使って腕をひねり、指先に力を入れる」という大変な作業であったりします。中にはトイレットペーパーを引きちぎることが大変なので、家族に数回分ちぎっておいてもらい利き手側に用意している、という方もいるほどです。
高齢者の方の住まいには、小さな部分に至るまで、その方の負担をできるだけ無くすような細やかな配慮をしたバリアフリー・リフォームが理想的です。
すべての人が住みよい家にするために
バリアフリー仕様は身体に不自由が生じた後の場合のためだけではなく、家庭内で起こりやすい事故を予防する役割も果たします。
統計によると、65歳以上の方の事故発生場所のうち8割は住宅内という結果が出ています。内容を見ると段差につまづいて転倒したり、階段から転落する例が約半分を占め、次に物に当たったり引っ掛かるなどしてやけどや怪我を負うことが多くなります。
特に骨折は介護が必要になるきっかけになることが多いので、転ばないような家にする必要があると言えます。高齢者はすり足に近い歩き方になりますので、わずかな段差でも徹底的に解消しておくと安心です。
例えば、扉の下枠の凸凹などはとても小さなものですが、それさえも危険のうちに入るので、その段差は3ミリ以下が望ましいと言われています。徹底したバリアフリー計画では、下枠のない上から吊るすタイプの引戸にすることもあります。段差が3㎝程度のものにはスロープを設けたり、大きな段差には手すりをつけるなどの改善改修が勧められます。
ちなみに段差が2㎝あると、車いすは通行ができなくなります。家の中を車いすで移動したい場合は、段差は全く無くす方向で考えておく方がよいでしょう。
また、バリアフリー工事の範囲には入りませんが、カーペットやマット類はなるべく無くすか、めくれないように固定する、配線コード類はひっかかることのないように床下や壁に這わせる、段差部分は目立つように印をつけたり照明で明るくする、滑りやすい雑誌や新聞などを床に置いたままにしないなど、日常のちょっとした心がけや整理整頓もとても大切になります。
これらのことは、小さなお子さんや妊婦さん、病気や怪我をした人にとっても大変安心できるものです。バリアフリー対策が取られている家は、いつ誰が対象になっても安心して住むことのできる、安全な住まいになります。
弊社リフォーム施工例
高い段差のあった玄関先に幅広の玄関式台を設け、段差を少なくした例
上吊り式の引戸なら、全く段差のない床にできる
オリジナルの上吊り式引戸で床面もすっきり。廊下と部屋のつながりもスムーズに。
補助金利用で賢くリフォーム!
要件を満たしたバリアフリー・リフォームには、補助金の給付を受けることのできる制度があります。
まず介護保険には在宅サービスの一環に高齢者住宅改修費用助成があり、保険から最大18万円(支給限度額20万から自己負担分1割を引いた額)が支給されます。
これは要支援・要介護と認定されている方と、その同居する家族が上記(3)~(8)までの工事を行う時が対象になります。
支給を受けるには、工事前の申請手続きが必要です。申請書類にはケアマネージャー作成による理由書と、見積書や工事内容の図面等を提出しなければなりませんので、事前に福祉関係者と工事関係者との3者での相談が必要になります。
また介護保険とは別に、自治体からバリアフリー・リフォームに対して補助金が出されています。
例えば姫路市とたつの市では、65歳以上で要支援・要介護認定を受けている方を含む世帯が、同様に(3)~(8)までの工事をする場合、最大で80万円の支給が受けられます。(住宅改造費助成事業・特別型)これも事前の申請が必要ですので、介護保険補助金申請時の打合わせと同時に相談するとよいでしょう。
姫路市では更に、介護認定を受けていない60歳以上の方を含む世帯が、将来に備えたバリアフリー・リフォームを行う場合に最大で100万円の補助金を助成しています。(住宅改造費助成事業・一般型)生活中心者の給与所得制限や、工事箇所の指定などがありますが、利用者に大変人気となり昨年度は申請開始から半年ほどで予算に達し、早期に受付が終了したようです。
平成27年度事業が新たに始まる可能性がありますので、検討される方はお早めに業者にご相談しておくことをお勧めします。尚、バリアフリー・リフォームに施工業者の指定はありませんので、信頼できる業者をお選び頂きご相談下さい。
リフォームに使える減税制度
バリアフリー・リフォームでは補助金が交付されるほかに、固定資産税と所得税の税金面でも優遇を受けることができます。まず固定資産税ですが、
- 65歳以上
- 障害者
- 要介護か要支援認定者
のいずれかが住む世帯で、上記(1)~(8)までの工事を平成19年1月1日前から存在する住宅で行った場合、固定資産税の3分の1を一年度分軽減します。
ただし、バリアフリー・リフォームの工事費から各種補助金を控除した額が50万円以上であることが条件です。工事が完了した後に市町村に申告することになります。
所得税はバリアフリー・リフォームを行った後に確定申告を行うことで控除が受けられます。対象となる工事は同じく上記(1)~(8)に当てはまるもので、
- 50歳以上
- 要介護か要支援認定者
- 障害者
- 65歳以上の親族か、要介護・要支援・障害者と同居する家族
のいずれかである住宅に適用されます。
住宅ローンの借り入れの有無しにより多少内容が異なりますが、ローンの借り入れがある場合は最高で25万円まで、借入のない場合は最高で20万まで所得税が控除されます。
具体的な控除額は、実際にかかった工事費用と各ご家庭の納税額で変わりますので、工事が行われた年度末に源泉徴収票をもとに算出することになります。固定資産税の減額と、所得税の控除は同時に受けることができます。税金についてはよくわかる冊子もありますので、弊社までお問い合わせ下さい。