コラム
2016.08.01更新
ADハウス通信 2016年夏号「地震に耐えられる家って、どんな家?」
目次
本地震から見えてきた、これからの住まいの安全対策
4月に起きた熊本地震では、住宅に大きな被害が出ている様子が報道され、多くの人に衝撃を与えました。
とりわけ、震度7を2回観測するというかつてない揺れにより、比較的新しい家でも倒壊していた姿に「今住んでいる家は大丈夫なのか」との不安が広まっているようです。
また、耐震性能について詳しく知りたいというご質問も多くお受けします。
地震に強い、安全な家を誰でも願うものです。繰り返し起こる大地震に対してどう備えたらよいのか、熊本地震から見えてきた、これからの住まいの安全対策についてお伝えします。
建築基準法とは最低限のルール決め
これまで大きな地震がある度に建築基準法は改正され、耐震基準はより厳しいものになっています。
木造建築物については、平成12年(2000年)に施工された「新・新耐震基準」と呼ばれる基準が最新の耐震基準となります。
この年以降に建てられた住宅ならまず大丈夫、と思われていましたが、最新の耐震基準にはどの程度の耐震性があるのでしょうか。
法律上では「震度6強から7程度の地震力に対して倒壊、崩壊しない。震度5強で損傷しない」強さを規定していますが、これはあくまでも最低限であると考えて下さい。
建築基準法は人命を守るための最低基準を定めているので、耐震基準は「地震で建物は大きな被害を受けることはあっても、少なくとも瞬時に崩壊することはなく、人が下敷きにならなければよい」という考えを基にしています。
よく建築基準法を満たしているのだから大丈夫です、という言葉を聞きますが、それは建物が無傷で済むことなのか、人が犠牲にならない程度の強さしかないのか、人によって解釈に非常に幅が出てきます。
基準法並みで十分だと思う方から、それよりも頑丈にしたいという方までいることでしょう。我が家の耐震性能をどこまで求めるのか、目標を定めて住まいを作ることが不可欠になります。
耐震等級で大きく変わる耐震性
熊本地震では新しい家でも倒壊した例が多数あり、「新・新耐震基準でも危ないのでは」という声が聞かれました。
新・新耐震基準が前提にしているのは、震度7の地震力が1回のみで、連続した大地震を想定していません。
数百年に一度と言われる震度7が2回も起こることを想定できなかったのは無理もありませんが、それでも倒壊していない家もあることから、何が明暗を分けたのか専門家による検証が行われました。
その結果、建物の耐震等級が大きく影響していることが判明しました。
耐震等級とは住宅性能表示制度に基づく建物の強さの目安で、地震に対する倒壊のしにくさを段階で表わしたものです。
最低等級の1は建築基準法と同等の強さがあり、最高等級の3は建築基準法の1.5倍の強度があるものとします。等級1と3では実際どの位の差があるのか比べてみましょう。
今回の熊本地震のような、2回の震度7でも倒壊を免れるには、少なくとも耐震等級2以上が必要、等級3がより望ましいとの調査結果が出ています。
実は、熊本は地震が少ない県とされていたため、耐震性能をあげなくても耐震等級を上にみなすという特別な地域(地域地震係数による地震力の低減)に指定されていました。
つまり、等級2の住宅の中には、実際には等級1を少し超える程度の耐震性しかないものも多くあったようです。
大地震が連続すると建物の傷が累積し、建築基準法同等の等級1では到底耐えることができません。今後日本でどんな地震が発生するかは全く分かりませんし、耐震等級をどこまで上げるのかは自由ですが、やはり可能な限り十分に備えておきたいところです。
エイディーハウスでは、住まいは法的に問題なければそれでよいとは考えないことから、従来より耐震等級は3を標準仕様にしています。耐震性を曖昧にせず、設計段階から施工においての工程を明確にご説明いたしますので、疑問やご質問などをどうぞご相談下さい。
地震保険って役に立つ?
それでも、どんなに耐震性能を高めても、地震による被害は免れないのではという声も聞かれます。
確かに大地震でも傷一つない建物は理想的ではありますが、例えば耐震等級3を超える性能を備えた建物をつくろうとすると技術的に非常に難しく、費用も現実的ではありません。
結局壊れる可能性があるのならどうしたらよいのか、という時のために、地震保険が存在します。
保険料が高い割には十分な保険金をもらえない、という理由で加入率の低い地震保険ですが、地震保険自体の意義や仕組みはあまり知られていないようです。
まず地震保険は他の保険とは異なり、国の政策の一環となっているため、政府と民間が共同で運営しています。
ひとたび大地震が起きるとその保険額は莫大なものになります。民間の損害保険会社では支払えない場合があるので、国が一緒に補償して、契約者に保険が支払えるような体制になっています。
また一番誤解されている点は、地震保険とは家の再建ではなく、生活の立て直しのための資金確保を目的としていることでしょう。
家を建て直すほどの保険金がもらえないのなら、高い保険料を払う必要はないと思いがちですが、被災した家の再建や生活の立て直しの足がかりとなる資金の給付があれば大きな支えになるでしょう。
特に住宅を取得して間もない方は、多額のローンが残り、手元に資金があまりない状態です。このような時に被災すると借金だけが残るので、地震保険への加入が特に勧められます。
地震保険に入る必要はある?
地震が原因で起きた火災や、津波による家屋の流失には、火災保険を使うことができません。
地震保険は単体での加入ができないので、火災保険と合わせて入る必要があります。
加入している火災保険があれば契約途中でも付帯できます。地震保険の契約金額は、火災保険の30%~50%の間で設定します。補償範囲は全損、半損、一部損に区分され、それぞれ支払われる保険金額が異なります。
契約金額には上限があり(建物5000万、家財1000万)上限いっぱいに掛けても、同じ家を一から再建することは難しいでしょう。
しかし、地震保険は生活立て直しの準備金であると理解して、控えめの金額でも保険を掛け、いざという時に困らないようにしておくだけで被災後の暮らしは変わります。
地震保険で何を補いたいのか、その目的によって加入の有無や契約内容を決めるとよいでしょう。尚、耐震性が高い住宅には割引制度があります。耐震等級2では保険料が20%、耐震等級3では保険料が50%割引されます。
もしもの時を想定することも大切
また、兵庫県では阪神淡路大震災の教訓をもとにしてつくられた独自の住宅再建共済制度「フェニックス共済」があります。
これは財産の補てんを目的とした地震保険と性質が異なり、住宅の再建を支援するものです。
地震の他にも豪雨や暴風などの自然災害による被害も対象になり、年間5千円の掛け金で最大600万円が給付される画期的な仕組みになっています。
地震保険と併用もできるので、兵庫県内に住まいを所有している人にはお勧めの制度です。
また、不幸にして地震による被害に遭った場合、地震保険の申請の際は市町村が発行する罹災(りさい)証明書は必要ありませんが、フェニックス共済の申請には罹災証明が必要になります。
この罹災証明は、住まいがどのくらい損壊したのかを市町村から判定してもらわなければならないため、発行に大変時間がかかります。
それまでに補修などを独自にしてしまうと損壊の判定がしにくくなりますので、気持ちは焦りますが手を加える前に、証拠となる写真をできるだけ多く取っておくことをお勧めします。
もしものときを考え、あらゆる手段で備えておくことが必要な時代になってきているかも知れません。今一度、ご自宅の安心について考えてみられてはいかがでしょうか。
編集後記
まさか自分が生きている間に、日本がこれだけ大震災に見舞われるとは思っていなかったな。
熊本地震があった時、信じられない気持ちと不安が一気に押し寄せました。それでも、阪神淡路大震災後に関西にやってきた編集者Y、東日本大震災も経験せず、熊本地震にも遭わずに済んでいる。これはもはや奇跡といわなくてはいけないんじゃないか?!
苦しい思いをした方がたくさんいた中、何事もなく生活していることが何か後ろめたく・・・と同時に思ったのが、やはり備えは必要だということ。
日本全国、天災は忘れた頃にやってきます。そういえば東日本大震災のあと、焦ってあれこれ防災用品を買い揃えた編集者、一度整理しなければと思い立って納戸をお片づけ。
当時買った非常食はほぼ賞味期限切れでした(爆)
今、非常食は「ローリングストック」という方法で備えておくのが常識らしいですね。消費しながら足すというやり方です。最低でも3日分の食料を常に確保しつつ、消費期限が近付いたものは食べて、新たなものを買っておく。無駄にならず、点検と見直しもこまめにできていいですね。
ということで今後の備蓄品の参考にするべく、賞味期限が少々過ぎていてもよかろうと、ひとり非常食の大試食会開催です。まず水を入れただけで食べられるというご飯。うーん、あれば食べるけど正直どうかな(笑)同じく水を入れたら食べられる餅。まあまあイケるけど、きなこは水が一緒じゃないとむせそう(汗)災害用クラッカーやビスケットも、お水がなかったら口の中パサパサで辛そうだなあ。缶詰のようかんとキャラメル、これは合格。缶詰のパンは美味しかったです。
でも思いましたが、いくら非常時とは言えど、ただ口にできればいいものではなくて、どうせなら美味しくて日常に近い食物がいい。いかにも非常食、よりも普通の缶詰だって元々2、3年はもつし、レトルトは長期保存可能。フリーズドライ食品も進化してる。美味しい食べ物で気持ちが救われることってありますよね。
日頃のお気に入りのストックがあれば、それだけで安心しそう。赤ちゃんのいるご家庭はミルクと離乳食を、食物アレルギーや食事制限のある人は、自身が食べられる物を普段からしっかり準備しておきましょう。もちろん、基本となるお水を忘れずに!1人一日3リットルですよ。カセットコンロとガスの用意もお忘れなく♪