コラム
2022.08.01更新
『大雨・台風シーズンの、住まいの安全対策』エーディーハウス通信2022年夏号
梅雨も本番に入り、明けるのが待ち遠しいこの頃ですが、続けて台風シーズンも迎えるなど、何かと雨の多い季節がやってきました。特に梅雨後半は豪雨になりやすく、また近年の台風は巨大化していることが心配されます。ただ大雨や台風はある程度の予測がつくので、事前に備えることができます。最近ではインターネットやSNSで様々な防災対策が紹介されていますが、それはご自身の住まいや暮らしに適したものかをよく考えてから実行することが重要です。根拠や理由も知っておくと、迷いのない正しい備えができます。今回は大雨、台風に対する住まいの防災対策にまつわる豆知識をお伝えします。
目次
換気扇はふさいだ方がいい? いいえ、ほとんどの場合必要なし
雨風が強い日や雨量がとても多い時は、雨水が部屋に入らないように換気扇をテープで塞ごう、という話を聞き、そうした方がいいのかと思う方が多いようです。確かに換気扇からは外の空気が入るので、風が強い時は換気扇を通して雨も一緒に入る可能性があります。ただここで言われている換気扇とは恐らく、昔ながらのプロペラファンのような換気扇だと思われます。このような換気扇の場合は外側の給気口をテープで覆えば雨風の侵入を防ぐことができますが、全てを塞いでしまうと換気不足に陥るので、少し隙間を開けておくことも忘れないようにします。そしてビニールやナイロン製のもので塞いだ時は、引火の恐れがあるので火を使った料理は絶対にしないようにしましょう。
また最近の台所はレンジフードが主流ですが、これは塞ぐ必要がありません。レンジフードの内部にはシャッターという装置がついおり、普段は外気が入らず、換気スイッチが入るとシャッターが開く仕組みになっています。中にはシロッコファンという換気扇がついていますが、外の風に影響されにくい構造のため、雨風が入り込む心配はありません。シロッコファンは排気量が強い分、多くの給気を必要とします。外の給気口を塞いでしまうと十分な換気ができなくなるので、塞がないようにしましょう
暴風雨の前には まず換気扇とフィルターの掃除をしておこう
我が家は24時間換気システムで常時付けておくように言われているけど、台風の時はどうしたらいいの?という質問も多く頂きます。これは、ヒューヒューという風切り音が大きすぎる時や、換気扇が破損する恐れがある程の強風時は停止してもいいでしょう。給気口は水が横流れで入ってくるような暴風雨の時は閉じてもいいのですが、24時換気システムの住宅はどんな時でも換気ができるように計画しているので、簡単に雨風が入り込むような給気口にはしていません。給気口を閉めるときは、「余程の時」と覚えておいて下さい。もし給気口を閉めた時や24時間換気システムを停止させた場合ですが、24時間換気システムは住まいの換気を機械にお任せしているものなので、停止している間は当然換気ができていないことになります。止めたままにしておくと結露やカビの原因になりますから、雨風が治まったらすぐに24時間換気システムを再開し、給気口も開けるようにして下さい。また、換気システムを停止している間は換気が不足することを頭におき、煮炊き料理を控えるなどの割り切りも必要です。更に、どの換気扇や給気口にも言えることですが、綺麗に掃除されているでしょうか。強風が吹くと、換気扇や給気口についていたホコリや汚れが室内に飛散してしまいます。特に給気口のフィルターは見落としがちです。フィルターが汚れで目詰まりしていると外から入る空気の量が少なく、換気の能率が悪くなります。フィルターは普段から定期的なお掃除を心掛け、台風の前はもう一度お手入れすることをお勧めします。
割れない窓ガラスはない 割れやすい状況にしない工夫を
台風並みの嵐がやってくると心配されるのは風による被害です。熱帯性低気圧のうち、最大風速17m/s以上のものが台風に分類されます。17m/sの風の速さを分かりやすく時速に換算してみると、約60キロ。走行中の自動車並みに相当する速さの強い風です。これでも台風の中では小ぶりで、「強い台風」と言われるクラスでは最大風速33m/s、時速118キロにも及びます。ただ、ほとんどの建物は台風並みの風圧に耐えられるように設計されているので、強風だけで倒れてしまうことはありません。問題は強風で飛ばされたモノが建物に当たって壊れることです。ガラスも風圧だけで割れることはないのですが、時速100キロでモノがぶつかれば割れてしまうのは当然です。柔らかなタオルでも、水に濡れた状態で飛んでくると簡単にガラスを突き破ります。よく台風の前は家の周りの飛びやすいものを固定したり、片付けるように呼びかけられているのはこのためですね。どんな小さなものでも侮らずに家の中に入れておくように心がけましょう。基本的に割れないガラスというものはないので、まずモノが当たらないように工夫するのが先決です。雨戸があればもちろん閉めましょう。SNSなどでは窓ガラスに養生テープを「×」印のような形に貼るとよいという投稿も見られますが、これは割れないためというよりは割れたガラスが飛散しないようにするためです。テープを貼ることでガラスの補強になる訳ではありませんので、間違えないように注意して下さい。網入りガラスも衝撃には弱いので油断は禁物です。万が一の時にガラスの飛散を少なくしたいという意味なら、養生テープよりも飛散防止フィルムをガラス全面に貼る方が効果的です。
万が一を想定した 事前の修理、準備、心構え
暴風雨時にガラスが割れてしまうと室内が悲惨な状況になることは想像できますね。怪我の恐れもあるので一刻も早く対応しなければなりませんが、嵐が収まらない限り何もできない状況が続いてしまいます。ガラスの破損で一番怖いのは、最悪の場合一瞬で建物が倒壊する恐れがあることです。穴から風が一気に吹き込むと、その風圧で室内側から屋根が吹き飛んでしまう可能性があります。特に今の住まいの屋根は軽い素材が多く吹き上がりやすいので、建物に穴があくような事態はなんとしても避けたいところです。ただ絶対にガラスが割れない方法はないので、もしもの時に備えてカーテンはしっかり閉じておきましょう。布では何の役にも立たないように思えますが、少なくとも更なるガラスの飛散は抑えることができます。ブルーシートもあれば様々な用途に使える便利なもの。安価でかさばらないので備えておくと安心です。またさすがにないとは思いますが、事前に窓のひび割れがないか扉にがたつきがないかもよく調べておきましょう。小さな隙間や傷は穴が開いている状態と一緒ですから、早めの修理が必要です。
台風一過のあとは点検!住まいの姿を知っておこう
台風が通り過ぎた後も気を抜かず、家の周りを一通り見ておきましょう。外壁に傷や割れがないか確かめることはとても大切です。小さな損傷でも放置すれば、家の劣化が急速に進みます。これまでもお伝えし続けていますが、家にとって湿気は大敵。雨というのは本当に厄介で、細かな隙間があれば中にどんどん入り込んでしまいます。周りが建物に囲まれた風通しが悪い住宅では、台風通過後わずか一週間でカビやキノコが発生した例があります。雨どいに詰まりや割れがないかのチェックは台風前も大切ですが、その後も異常がないかよく確かめておきましょう。雨水が溜まったままだと、建物がいつまでも湿気を帯びた状態になってしまいます。また、大雨や台風のあとには悪質な点検商法が横行します。突然訪問した業者に、知らなかった損傷の場所を指摘されてリフォームを勧められたりすると、動揺して言いなりになりがちです。すぐに修理できる状況ではなくても、損傷の有無と程度だけも把握しておくことは重要です。ゆっくり目視する時間がないという時は、とりあえず写真を撮っておくだけでも違います。台風は火災保険の対象になるので、一度保険契約の内容も確かめておきましょう。事前の備えと事後の点検。大切な住まいを風水害から守るために、普段から心に留めておきましょう。
編集後記
今年の夏は電力不足だそうで、節電要請出ましたね。冷房は28℃以下に設定しましょうとか節電できたらポイントを差し上げますとか、また冷房は悪みたいに言ってらっしゃる。だからね、28℃に設定しても室内が28℃だとは限らないんだってば。おまけにこまめに冷房を切れだなんて、断熱性能が悪い家だったらすぐに高温になって命取りになりますよ。「28℃に設定しよう」と言われると、真面目な日本人は従ってしまうし我慢する人が絶対出てくる。「室温が28℃以下か、ちゃんと温度計で室温を確認して」とどうして言えないのかな。と鼻息の荒い編集者Y。ああ怒ると余計暑いわ(笑)それに室温よりも湿度の方が問題です。湿度が高いと、28℃でもかなり不快で暑苦しいはず。だから設定温度がどうのこうの言う前に、まず住まいの高断熱高気密化が大切なんです。外気温に影響されなくなれば、冷房だけじゃなくて暖房も少なくて済むのですから。とはいっても、高断熱高気密化は国民すべてがすぐにできる訳じゃないし、となると手っ取り早くとにかく節電してねと言うしかないんでしょうね。政府も本気で電力危機を回避したいなら、住まいの断熱化こそ強力に推進して欲しいなあ。よく考えてみれば、この数年で世の中電気仕掛けのモノで溢れかえってしまっているのですよ。オール電化に電気自動車でしょ。家庭で使われる電力は50年間で2倍に増えてるんですって。我が家も子供3人全員いたときはコンセントが足りなくて困った。各自のスマホ、学校支給のタブレット、ゲーム機、パソコン、そこから無数に伸びる配線…そりゃ、電気足りないよね(笑)こんなに電気が必要な世界になるとは思わなかったけど、お偉い方々も想像できなかったのかなあ。しかし電気のお陰で便利な生活が成り立っている以上、今更ない生活には戻れない。となれば、余計な電気を使わなくても快適に暮らせるように、やっぱり住まいの高断熱化が必要なんじゃないですか?どうかそこ、気づいて欲しい…